はじめに
設計したシステムは多くの場合その時間応答で評価されます。
システムの評価のためのモデル化と時間応答の確認(シミュレーション)はシステムの制御開発のために最初に必要な知見になります。
制御対象のモデル化
状態方程式によるモデル化
モデル化の最初のステップ システムの状態を表現する物理式を書き出してみる
物理式を制御工学で扱えるモデル(状態方程式)にまとめる
バネ+ダンパ機構の物理式は、バネの変位量に比例する弾性力\(F_k\)、ダンパの変位速度に比例する粘性力\(F_d\)、質量𝑀のイナーシャ\(F_i\)と荷重による推力\(F_g\)の力の釣り合いを表しています。
\[F_k=Kx\] \[F_d=D\frac{dx}{dt}\] \[F_i=M\frac{dx^{2}}{dt^{2}}\] \[F_g=(M+ΔM)g\]
\[F_k+F_d+F_i=F_g\] \[Kx+D\frac{dx}{dt}+M\frac{dx^{2}}{dt^{2}}=(M+ΔM)g\]
この力の釣り合いの物理式を制御工学で扱えるモデルに変換します。
1階微分式に分解する
N階微分式は1次微分式に
\[\frac{dx}{dt}=\dot{x}\]
\[\frac{d\dot{x}}{dt}=-\frac{D}{M}\dot{x}-\frac{K}{M}x+\frac{g}{M}(M+ΔM)\]
微分で表現されている内部状態を選んでベクトルにまとめ行列表現に
\[\frac{d}{d t}\left[\begin{array}{l}x \\\dot{x}\end{array}\right]=\left[\begin{array}{cc}0 & 1 \\-\frac{K}{M} & -\frac{D}{M}\end{array}\right]\left[\begin{array}{l}x \\\dot{x}\end{array}\right]+\left[\begin{array}{c}0 \\\frac{g}{M}\end{array}\right](M+\Delta M)\]
この式を状態方程式、内部状態を表す変数を状態変数と呼びます。
まとめ
制御工学で扱えるモデル(状態方程式)は
\[\frac{dx(t)}{dt}=Ax(t)+Bu(t)\]
の形です。A, Bは定数行列、x(t)は状態変数のベクトル、u(t)はシステムの入力です。
上の式もそうですが、制御工学では主に連続時間系を扱います。しかし、組み込みエンジニアが実装するのは離散時間制御(デジタルシステムへの実装)になります。
そこで、連続時間システムのモデル(状態方程式)を離散時間システムで扱えるように変換する具体的な手法が必要になります。
次は、この状態方程式を離散化した逐次式に変換していきます。
こちら→状態方程式から離散化した逐次式へ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。