CR回路モデルの時間応答の確認

04. モデルによる時間応答の確認

はじめに

状態方程式から離散化した逐次式へ で求めた離散化した逐次式

\[x(t+Δt)=Px(t)+Qu(t)\]\[P=I+AΔt(I-\frac{Δt}{2}A)^{-1}\]\[Q=Δt(I-\frac{Δt}{2}A)^{-1}B\]

を用いてCR回路の時間応答の確認(シミュレーション)をしていきます。

CR回路モデル



入力:印加電圧 \(V_{b}\)
出力:キャパシタの電圧 \(V_{c}\)   とすると
\[V_{b}=IR+V_{c} \hspace{1cm} I=C\frac{dV_{c}}{dt} \]より、状態方程式は
\[\frac{d}{dt}V_{c}=-\frac{1}{CR}V_{c}+\frac{1}{CR}V_{b}\]
離散化した逐次式\[x(t+Δt)=Px(t)+Qu(t)\]のPとQは、下に示しているようにExcelの表計算シートで計算できます。また、状態方程式を離散化した逐次式にすることによりExcelでのシミュレーションが容易になります。

EXCELファイルのダウンロード

CR回路モデルよりExcelファイルをダウンロードできます。

状態方程式のシートでは、上記のように離散化した逐次式のPとQを計算しています。
CR回路モデルでは、AとBは行列ではないですが、Excelでの計算は1×1の行列として扱い、逆行列(MINVERSE)行列の積(MMULT)といった関数を使っています。

時間応答の確認

Excelのシミュレーションのシートでは、状態方程式のシートで計算したPとQを使い、下に示すように逐次式\[x(t+Δt)=Px(t)+Qu(t)\]によって時間応答を計算しています。Excelの1行が離散時間Δtです。

上部のスライドボリュームで抵抗値Rや静電容量Cを変更すると時間応答の変化を確認することができます。

一次遅れ系

一次遅れ系は使う機会が多いのでここで説明しておきます。
一次遅れ系は入力に対して遅れて追従するシステムで、状態方程式は次の式になります。
\[\frac{d}{d t} x=-\frac{1}{T} x+\frac{1}{T} u \hspace{2cm} (A=-\frac{1}{T} \hspace{0.5cm} B=\frac{1}{T}) \] Tは時定数と呼ばれ、ステップ入力の場合、T秒後の時間応答が63.2%になります。
逐次式では
\[x(t+Δt)=Px(t)+Qu(t)\] \[P=e^{A \Delta t}=e^{-\frac{\Delta t}{T}}\] \[Q=A^{-1}\left(e^{A \Delta t}-I\right) B=1-e^{-\frac{\Delta t}{T}}\]
ここで\[e^{-\frac{\Delta t}{T}}=\alpha\]とおくと逐次式は
\[x(k+1)=\alpha x(k)+(1-\alpha) u(k)\]時定数2secで離散時間100msの場合
\[\alpha=e^{-\frac{\Delta t}{T}}=e^{-\frac{0.1}{2.0}}=0.951229 \ldots\]
一次遅れ系の逐次式は利用用途が広いため覚えておくと便利です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次は、状態方程式のAとBが行列になる簡易的な車両の走行モデルで時間応答を確認します。
車両走行モデルの時間応答の確認



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